インタープロテイン(Interprotein)の社名は、タンパク質間相互作用(PPI: protein-protein interaction)を標的とする創薬に特化した会社であることに由来しています。
生体を構成する約2万種類のタンパク質は複合的にPPIをミクロの世界で形成しており、その相互作用の数は65万に達すると言われており、このPPIは生命現象の根幹である重要な反応を担っています。
このPPIの一つであり、多彩な生理作用を有するサイトカインと呼ばれるタンパク質の一種であるインターロイキン6(IL-6)を標的とした創薬に創業以来、取り組んでおります。IL-6は免疫応答や炎症反応の調節において極めて重要な役割を果たしていますが、本来の役割である生体の恒常性の維持から逸脱して過剰に産生されることによって様々な炎症性の病態を引き起こします。
したがって、IL-6とその受容体タンパク質とのPPIを阻害する低分子経口薬およびペプチド薬の開発プロジェクトの進展により、広く罹患者を病気から救済することを目指しおります。
医薬品の研究開発の歴史は100年以上になりますが、ここ数十年の科学の発展により従来の低分子創薬や抗体医薬などに代表される遺伝子組み換え医薬に加え、細胞療法、再生医療、ゲノム編集のような新しいモダリティが生まれ、これらを治療に供する時代になりました。その結果、従来治療が困難であった難病が少しずつ解決するようになりました。一方で新しいモダリティの出現は医療の高額化を招き、新たな医療の課題となっています。医療にアクセスできる人が増え続け、既に医薬品の市場は200兆円を超える時代に入った背景には医薬品の高額化も大きく影響しています。
日本国内での難病指定疾患は338を数え、世界では7000近く存在するとも言われています。
創薬につながる標的となり得るタンパク質の数は1500種類程度、実際に創薬の標的となっているタンパク質数は300種類程度と言われている中で、標的の枯渇問題が相当長く科学的に議論されています。
タンパク質間相互作用の数はおよそ65万種類であり、生命現象の根幹にあると述べましたが、今般のパンデミックではSARS2コロナウイルスが有するスパイクタンパク質とヒトや動物の血管に存在するACE2タンパク質との結合によってSARS2コロナウイルスが体内に侵入する仕組みが詳細に明らかになりました。つまり、生体を構成するタンパク質以外ともタンパク質間相互作用を課題として想定する必要があることが分かって参りました。更には、特定のタンパク質の変異体がガンを中心に難病の原因であることもゲノム研究で広く明らかになり、ここにも新たなタンパク質間相互作用が課題として理解されています。
タンパク質間相互作用標的の創薬は非常に難易度が高く成功事例は極めて限定的であることから、一般には創薬テーマとして敬遠されがちです。インタープロテインはこのタンパク質間相互作用標的の創薬を確実に成功させ、その結果として多くの難病から患者様を救える時代を創ることに取組んでいます。この新たな時代を実現するために構造生物学、生化学、分子生物学、有機化学に加えて量子科学をベースとした人工知能を駆使した基盤技術開発を進めております。その成果として、低分子IL-6阻害薬プロジェクトに限らず、多くのタンパク質間相互作用標的の創薬に弊社の基盤技術を汎用的に活用できる段階が見えて参りました。
多くのモダリティの開発が医療の現場に広がることは素晴らしいことです。そのような中におきまして、インタープロテインは世界人口が80億人を超えた時代に全てのヒトの手に届く、最も汎用性が高い経口薬開発を進めて行きたいと考えております。
今後ともご支援の程、どうぞよろしくお願い申しあげます。
細田 雅人