事業戦略

蛋白質間相互作用(PPI)をターゲットとする創薬戦略

背景

これまで創薬につながる蛋白標的数は1,500程度と言われていますが、実際に臨床に使用されている薬の蛋白標的数は300程度です。一方、Interactomeで想定されているPPIは13万65万とされ、実際に反応が確認されているPPIは500程度と言われています。そして実際に阻害薬が見出されているPPIは100に満たないのが現状です。

創薬事業戦略

多くの生物学的反応、多くの疾患の発症・進展に関与しているPPIは、創薬標的として大きな可能性を秘めており、当社は、このPPIを標的とした創薬に注力してまいります。

  • 従来の創薬標的(受容体拮抗薬や酵素阻害薬など)は、その範囲が徐々に狭まる中、世界での競争は激しくなっており、創薬研究開発生産性の低下の原因にもなっていますが、一方でPPI標的創薬には量的・質的に非常に大きな可能性が秘められています。
  • 創薬研究開発生産性の改善のためにも「新しい創薬標的」を見つけなければならないという必要性が従来以上に高まっており、21世紀の創薬の主軸はいずれPPI標的の創薬に移行すると予見されています。
  • 従来からPPI標的の創薬は「難しい創薬標的」と考えられてきましたが、臨床的価値、創薬の可能性はともに明らかに高まりつつあり、当社は、その先行事例、フロント・ランナーの候補として独自の技術を用い、PPI標的創薬を展開しております。
  • 低分子創薬とhelix-loop-helix立体構造規制ペプチド創薬、この二つの独自技術を駆使し、幅広くPPI標的創薬を展開してまいります。
  • 低分子創薬につきましては、高いヒット率、druglikenessの高い高品質のヒット化合物の創出、効率的なヒット・リードの創出、そしてリード最適化の全て探索ステージに独自技術“INTENDD®”を活用してまいります。
  • helix-loop-helix立体構造規制ペプチド創薬につきましては、αヘリックス構造を有するPPI標的の場合には、直接的なデザインにより、そしてαヘリックス構造を有しない、あるいは標的分子の構造情報が不明などの場合には、ファージディスプレイによるスクリーニングによる最短での医薬候補分子の創出を目指してまいります。
  • 当社は、丸和栄養食品株式会社および宇宙航空研究開発機構(JAXA)とのコラボレーションにより高次元のX線結晶構造解析に取り組んでまいりました。今後も地上および宇宙空間での結晶化の蓄積されたノウハウの活用に、より高難度な結晶構造解析に取り組み、創薬研究開発生産性の向上に寄与するよう努めてまいります。
  • 当社の創薬チームは、がん、炎症、免疫、血液疾患、痛痒、認知症など幅広い疾患領域での経験を有しており、その経験を活かし、アントメットメディカルニーズの高い疾患群への創薬を展開してまいります。

当社PPI制御薬のアプローチ概念図

病態に関与するリガンドと受容体が完全に結合することによって、病態の形成につながるシグナルが細胞内に伝達される。

(例:VEGFがVEGF受容体に結合することによって、受容体及びその下流にある蛋白質がリン酸化される)

PPI制御薬がリガンド又はその受容体と結合することによって、リガンドと受容体の結合が完全に阻害される(リガンドと受容体が解離する)ケース、並びにリガンドと受容体は結合するものの、その結合様式が正常な状態とは異なり、結果的に伝達されるシグナルが減弱するケースが想定される。

なお、ここでは細胞外のリガンドと細胞膜表面上の受容体との結合を示すが、細胞質内あるいは核内に存在する種々の因子(転写因子、転写調節因子、核内受容体など)の複合体形成に対しても同様に作用するPPI制御薬を探索している。


(注)リガンド・・・特定の受容体と結合することによって細胞内にシグナルを発生させるような物質